野球肩野球肘にも応用可能な幹細胞治療、メリットデメリットや費用は?

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野球肩野球肘の幹細胞治療

野球肩野球肘への応用も可能になって来た幹細胞治療

近年、野球肩野球肘に対する幹細胞治療の可能性が広がって来ました。幹細胞とはiPS細胞やES細胞のことになるわけですが、幹細胞治療が可能となれば、手術をしなくても野球肩や野球肘を治せるようになります。

まずは、iPS細胞とES細胞について簡単にご説明しておきたいと思います。

iPS細胞というのは人工的に作られた細胞のことで、無限に増やすことができます。そして自分自身の細胞から作ることも可能なため、体が拒絶反応を起こすことがないと言われています。また、ES細胞と違い倫理的問題は一切ないのですが、逆に癌化する可能性が0ではありません。

一方ES細胞というのは受精卵(将来赤ちゃんになる細胞)から作られるため、倫理的な問題が大きいんです。本来であれば赤ちゃんになるはずの命から作るということが問題視されていますが、しかし無限に増やすことができます。ですが体への拒絶反応が0ではありません。

野球肩野球肘の幹細胞治療はまだ推奨できない

2021〜2022年現時点においてはまだ、僕はプロコーチとしては野球肩野球肘の幹細胞治療をお勧めすることはできません。その理由として、まだ治験の絶対数が少な過ぎて、本当に良い治療法であるのかがエビデンスとして証明され切っていないからです。

iPS細胞に関しては自分の細胞から作ることができるため、拒絶反応は起こさないと言われていると上述しましたが、しかしこれもあくまでも現時点での話に過ぎません。治験の絶対数が増えれば、人工的に手が加えられているだけに、拒絶反応を示す事例が出てくる将来的な可能性も現段階では否めないわけです。

ES細胞にしても、世界ではこの問題だけではなく、誕生前にお腹の赤ちゃんに障害がないかどうかを調べ、もしあった場合は堕胎することも医学的には可能になっていることも頻繁に倫理議論されています。

そしてもう一点、幹細胞治療はまだ保険適用外です。そのため目が飛び出るような高額な費用がかかってしまいます。つまり現段階で幹細胞治療を受けられるのは、大富豪くらいのものです。

もちろん今後この費用が低くなっていくことは間違いありませんが、しかし我々のような一般人が幹細胞治療を保険適用で受けられるようになるのは、少なくとも10年以上先になるのではないでしょうか。

切れてしまった靭帯に幹細胞治療はできない

野球動作科学はもちろんのこと、医学の進歩も目覚ましいものがあります。この幹細胞治療なども、10年前までは我々野球人には想像もつかなかったことです。

ですが仮にこの幹細胞治療が身近な治療法として可能になったとしても、「幹細胞治療すればちゃんと治るから無理しても大丈夫」とは思わないでください。

例えば内側側副靱帯を痛める野球肘にももちろん応用できるわけですが、しかし実際に応用できるのは切れていない靭帯です。切れてしまった靭帯はその程度は問わず、トミー・ジョン手術(TJ手術)によって靭帯を移植しなければ治すことはできません。

日本の野球指導現場は小学生の段階から肩肘の酷使が深刻です。僕らのようなプロコーチがいくら声を上げてもそれはなかなか届かず、子どもたちの体の酷使が減る兆しは一向に見えて来ません。

医学は進歩するも野球界は未だ前時代的

進歩を続ける医学には僕自身感動を覚えることも多々あるのですが、しかし新たな治療法が誕生したからと言って、子どもたちの体の酷使を指導現場レベルで変えていかなければ、野球界では根本的な解決が見えてくることはないでしょう。

例えば一週間の球数制限が500球というルールが登場しましたが、僕に言わせれば実にナンセンスです。だってこれは、1試合100球以下だったら週に5回先発登板できてしまうことになりますからね。

ルールそのものが誕生したのは一歩前進したと言えるのかもしれませんが、しかしこのルールからは「野球連盟の大人たちは本気で子どもたちの体を守ろうとはしていない」というのがよく分かります。

今後幹細胞治療に関する知見やエビデンスが増えてくれば、「今の時代は幹細胞治療で肩も肘も治せるから、痛めたって大丈夫」と誤解して吹聴してしまう野球指導者も、間違いなく出てくるはずです。これも今後危惧すべきことです。

現に今アメリカがそうで、TJ手術の失敗率が限りなく0%に近づいて来ているため、「肘を痛めてもTJ手術を受ければ良い」と考えているメジャーリーガー、マイナーリーガーが非常に多いんです。

野球界は常にアメリカから最新情報が日本に届いて来ます。日本も今TJ手術を受ける選手が非常に多いですよね?埼玉西武ライオンズという1チームだけを見ても、2021年だけで4人のピッチャーがTJ手術を受けています。つまりアメリカと同じ状況になりつつあるということです。

ですので幹細胞治療の野球肩野球肘への治験が増えた時、TJ手術よりもリスクが少ないわけですから、今まで以上に肩肘を痛めない正しい投げ方の習得を目指さない・学ばない選手や指導者が増えてしまうかもしれません。医学の進歩は歓迎すべきものですが、野球界の前時代的体質や考え方は、そろそろ変わってくれると良いなと思います。

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ブログ筆者:カズコーチ
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