
スライダーを投げると野球肘になりやすいというのは本当なのか?!
スライダーを投げると肘が下がったり、肘を痛めることが多いから投げない、というプロ野球選手たちがいます。ですが結論から言うと、正しい投げ方でスライダーを投げていれば肘を痛めるリスクを余分に高めることはありません。
スライダーを肩関節の外旋や、肘の回外によって投げてしまうとすぐに野球肘になってしまいます。特に肘の回外が加わっていると危険度は大幅に高まります。
スライダーにしてもカーブにしても、正しい投げ方がされているストレート同様、肩関節は内旋させながらリリースしていくのが正しい投げ方です。
腕の振り方は正しい投げ方のストレートとまったく同じで、リリースポイントがストレートよりも20°くらい手前だとカッター、45°くらい手前だとスライダー、90°くらい手前だとカーブになります。
このように、変化球の回転というのは小手先ではなくてリリースポイントの違いによって与えていくべきものなんです。これができるようになると、スライダーを投げても肘を痛めることはなくなります。
実は変化球よりも体への負荷が小さい変化球
大事なので繰り返しお伝えしますが、とにかく避けたいのは肘の回外によって投げるスライダー、もしくは肘の回内によって投げるシュートです。この投げ方をしてしまうと、お子さんによっては数球投げただけでも肘が痛くなります。
ちなみに肘の回外によってスライダーを投げようとすると、必ず肩関節を水平内転させなければボールをリリースポイントに持っていくことができなくなります。そして肩関節を水平内転させてしまうと、人間の体の構造として、肘は必ず下がるようになります。その結果として肩肘への負荷を高めてしまいます。
理論的には、体への負荷はストレートよりもスライダーやカーブの方が小さくなります。それは球速が遅い分、ボールリリース時に生じる負荷が小さくなるためです。
体への負荷が最も小さい球種はドロップです。ドロップは、アメリカではセーフティカーブとも呼ばれていて、肘を痛めない球種として子どもたちには指導されています。
ドロップに関しては僕も選手たちには推奨していて、ドロップを投げられるようになった選手(ポジション問わず)には、キャッチボールはまずはドロップから始めると良いと伝えています。
ドロップは腕をリラックスさせて、肘を柔らかく使わなければ投げられない球種で、ドロップにより良い腕の動かし方を馴染ませた後でストレートを投げると、ストレートの伸びを自然とアップさせることができます。
肘を回外させると必ず肘は下がる!
昭和や平成前半の野球指導現場では、肘関節を回外させて投げるスライダーやカーブが普通に教え込まれていました。もちろん今でもそのような指導がされているケースが多いのですが、これは完全に間違ったスライダーの投げ方です。
例えば桑田真澄投手や岸孝之投手などが、あえてスライダーを投げない投手になるわけですが、彼らもやはりスライダーによって肘が下がるのを嫌がり、投げるのを避けています。
しかし肘を回外させなければ、スライダーによって肘が下がることはありません。ただしその前に、正しいストレートの投げ方をマスターしている必要がありますが。
科学的に本当に正しいストレートの投げ方、肩肘を痛めない動作改善法に関しては、僕が監修している『よくわかる!投球障害予防改善法-徹底解説ビデオ』でチェックしてみてください。西武ライオンズのコーチも推奨してくれている安心の内容になっています。
スライダーという球種は、投げられると大きな武器になります。しかし投げ方を間違えてしまうと簡単に野球肘になってしまうため、とにかく肘の回外によってスライダーを投げることだけは避けるようにしましょう。
肘は回外も回内もさせず、肩関節を内旋させながら、非軸足側の股関節の内旋だけでボールを前に出していきリリースできるようになると、スライダーによって野球肘になることもなくなります。